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写真家の物語 ~テラウチマサトが見たイタリアの古都~

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 それぞれのことに理由があります。皆さんは、なぜマンホールが丸い形をしているかご存知ですか?垂直水平の直線で構成される街なのだから、マンホールも四角の方が絶対キレイですよね。でもなぜか丸い形をしている。ある方にそれを聞いたら、それは丸だとふたが落ちない為だと言われたんですね。あぁ、なるほど、と。あらゆるものには、そうなる理由があるんです。

 そう考えたとき、彫像を施すというのは、「凄いだろう!」という威嚇があるんじゃないかと思ったんですね。こんなことが出来るんだぞ!という国家発揚のような。そう気づいて、日本文化を振り返った時、日本の文化というのは「空(うつ=何もない良さ)」だと感じたんですね。茶室のように、何もない空間に想像する楽しみや魅力を感じる文化だと思ったんです。

 去年、式年遷宮というイベントがあり、出雲大社と伊勢神宮に大勢の方が行かれました。あの儀式もシンプルな社だけをつくって、そこに神様が入るだろうという考えです。この旅をしながら、そんな日本文化とイタリア文化の違いを感じたりしました。

 α7というカメラのデザインは、「空」に近いかなと思います。ごたごた飾り付けていないところに良さを感じました。今回の撮影では、シンプルに写真を撮るという日本的な考え方が僕の美意識になっていて、フレーミングの選択肢になっています。

 冒頭で、写真家にとって最も重要なことは選択のセンスといいました。それは、撮影場所だったり、カメラ、レンズ、シャッタースピード、絞りだったりということになりますが、これらの選択を変えられるかどうかという事がとても大事なんですよ。

 ちょっと話がずれるのですが、自分は昔太っていた時期があって。その時「それは食べ物が悪いせいだ」と言われたんですね。今食べているものが半年後の自分をつくるから、食べ物を変えなさいと。そうして、実践したところ、スリムになり健康にもなったんです。

 そこで、それが僕のおかしいところでもあるのだけれど、じゃあ成功するためには何を変えたらいいのだろうって思ったわけです。僕はこれまで6,000人以上の著名人のポートレイトを撮っていて、その中には物凄く成功している人たちがいるんですね。この人と僕の違いは何だろうと思った時、それは選択肢じゃないかと気づいた。成功するにはいつもと違うことをやってみるという選択肢。そこで、いつもやっている事を変えようと思ったんです。

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テラウチマサト

1954年生まれ。日本実業出版社を経て1991年に独立。ポートレイト、風景、プロダクトから空間まで、独自の表現手法で常に注目を集める写真家。中でも、ポートレイト作品においてはこれまで6000人以上の俳優、モデル、タレント、経営者などの著名人を撮影。テラウチにしか撮らせないという声も多い。また、風景作品では、その場所の魅力を着実に捉える力を評価され、行政からの撮影要望も多い。モノやコトの“隠れた本質”を捉える着眼点や斬新な表現手法に、イベントプロデュースから、町興しのオファーも集まる。写真家としてのクリエイティビティを活かした幅広い創作活動を得意とする。米国マサチューセッツ工科大学で講演、2012年パリのユネスコ本部から招聘され写真展示するなど、海外からも高い評価を得ている。
http://www.terauchi.com/


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